北川智浩の白磁と自転車

北海道の江別市で陶芸(白磁)の制作をしています。

「いい急須」?「たつ急須」?

20121102急須1

もう10年以上前、まだ弟子の時、
作家さんを訪ねて旅をしたことがあります。

その中に、代々急須作りをされている作家さんがいました。
こちらの急な申し出にもかかわらず、事前に連絡すると

訪問を許していただいて、お話していただけました。


当時、私は急須を作ったことが無く、

でも、お茶や水を注ぐ茶器や注器のたぐいは
いくらデザインが優れていても、道具として“使える”モノでなければならず

求められるハードルがなんて高いだろう、と思っていました。

そして、「そういう世界には決して手を出さないようにしよう」
と思っていました。

作った事がないのに急須の作家さんのお話を聴きに行くというのも
失礼な話です。何を質問したらいいのかわからないのですから。

こちらは何とか会話をつなげようと
即席の知識で質問しました。

「急須って立つのがいいんですか?」

急須作家さんはきっと何度もその質問をされているのでしょう。

少し困ったような表情で

「いい急須は立ちます。ただ、必ずしも 立つ急須 がいい急須とは限りませんね。」

と答えてくれました。

まるで禅問答では… 
何を言いたいのかわからない… というのが当時の私の率直な思いでした。


ただ、その言葉 だけは、なぜだか心の端っこにひっかかって、

その後、何年か経ったあとでも
急須を見たときに、ふと思い出したりしました。

20121102急須2

独立してしばらく経った後、お世話になっていたお店の方から、
白磁湯飲みに合うような、白磁急須を作ってみないかというお話を頂いて、

最初は「絶対やりません」とお断りしていました。
ハードルが高くて、かつ禅問答の世界では戦えません。

煎茶の色や香りを吟味する際に使うと言われる白磁湯呑。
その湯呑とセットで急須をお客様に提案できたら素敵じゃない!と言われ、

確かにそうかもしれない とは考えていました。


磁器での急須作りはわからない部分が多く、
何年か調べて、これで出来るかもしれないと思い、

お店の方に「やります」と約束しました。

ですがあまりにも成功率が低くて、悪戦苦闘。
でも、約束してしまったのだからと、覚悟を決めて試行錯誤するしかありません。


そうしているうちに、少しづつわかる部分が多くなってきました。

もっとも、代々急須作りをされている方々には蓄積された技があり、

その方たちの作品と並べていただいても何とか恥ずかしくないものを造りたい
そういう思いは急須つくりを始めた頃からいまもかわっていません。


最近、作品解説やギャラリートークという形でお話する機会があります。

その時、急須を作ったことのある陶芸科の学生さんからは「立つ急須」について
質問を受けることがあります。

その時には“うけうり”ですが、と前置きして
「いい急須は立ちます。ただ、必ずしも 立つ急須 がいい急須とは限りません。」

そして、これは私の言葉ですが
「立たせようとだけ思えば、立たせることが出来ますよ。」

とお答えすることにしています。


写真は第2回伝統工芸北海道展に出品する急須です。

そして、これは、お願いですが、私の作品に限らず、急須を立たせる場合は
くれぐれも作家さんにお願いしましょう。

展示台は必ずしも水平とは限りません。
転倒の際は責任を負いかねますのであしからずです。


20121102急須3



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  1. 2012/11/02(金) 14:20:53|
  2. 急須、煎茶の器
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